マッセートの当たり年を分析!メルロ種からつくられるイタリアの「ル パン」とも称賛されるこのmassetoの味わいや飲み頃を見ていきましょう。どのようにしてマッセートワインが造られてきたのか、そして当たり年がどのように評価されているかを分析していきます。
マッセートの最も優れた当たり年(グレートヴィンテージ)
2016年、2015年、2006年
当たり年の中でも2015年、2016年はワインアドヴォケイトで2年連続100点満点を獲得しており、さらに2006年もワインアドヴォケイトで100点満点を獲得しております。品質の高さはお墨付きであり、イタリアのル・パンとも言われるほどのワインです。
100点満点のワインに関しては購入ができるのかも見ていきましょう。もしまだ購入が可能であるならば、今すぐに購入したいワインです。
マッセート当たり年 2016年
ロバート・パーカー 100ポイント!
予想される飲み頃:2022-2050
何といっても2年連続でパーカーポイントを100点を獲得しているグレートヴィンテージ!!
恐ろしいほどにこのワインが優れているかを表しています。
2016年は近年通りの天候に恵まれた年でした。冬としては異常に温かく、2月に大量の雨が降り、3月下旬にはブドウの芽が出ました。
畑の土が十分な水分を含み例年より暖かかった4月、ブドウは順調に育ちます。5月には気温が平年並みに戻り、成長が少し緩やかになりましたが、順調につぼみがほころび、乾燥して日照が豊かな5月末、開花が始まりました。
上質のブドウができる理想の気候です。
夏は、温度は例年通りでしたが、果実が熟す時期まで雨がほとんど降らず、いわゆるウォーター・ストレスにより、上質のブドウができる見込みとなります。
例年は8月中旬に降る大雨も、今年はなく、乾燥した気候が収穫開始まで続きます。
夜間は温度が大きく冷え込んだため、ブドウの木が昼の日照とウォーター・ストレスから回復する理想の天候となりました。
果実は順調に成熟し、上質のワインに欠かせないタンニンやアントシアニンなどのフェノール分が豊かで質が高く、糖分と酸のバランスも理想的なブドウとなりました。
このため例年より収穫開始が早く、若木の収穫は8月24日から始まります。
9月に入って何回か小雨が降りましたが、ウォーター・ストレス状態のブドウには恵みの雨となりました。
これにより、全ての条件が完全に揃った収穫となります。
古木を植えたマッセート・チェントラーレの区画は理想的な天候の恩恵を最大限に受け、収穫開始の9月の第3週まで、十分成熟しました。
収穫は9月20日に無事、完了しました。
マッセート当たり年 2015年
ロバート・パーカー 100ポイント!
予想される飲み頃:2021-2050
2015年に2回目のパーカーポイント100点を獲得します。
この先の2016年にまた100点を出すとは誰も予想はしていませんでした。
変則的な2014年の後、2015年は例年通りで、マッセートの典型的なヴィンテージとなりました。
冬は雨が多く、寒さも厳しくなかったのですが、氷点下を下回る日が数日ありましたが、4月の初旬にはつぼみが発芽しました。
春は、乾燥した好天に恵まれ、ブドウの生育には理想の天候となります。
このため、開花が早く5月末には満開となりました。6月から、水不足によるウォーター・ストレスがゆっくり始まり、次第に目立つようになります。
7月は連日、最高気温が30度を越える暑くて乾燥した日が続き、最も暑くて乾燥した期間としてマッセート史上に残るでしょう。
雨不足と熱波によりブドウの成熟が止まり、早い時期に収穫しなければならない事態となる懸念がありましたが、幸い、8月10日に激しい雨が降り、再びブドウの成熟が進み、成熟の最後の時期はとても爽やかな気候となりました。
涼しく日照が多い天候は、収穫期間中もずっと続きます。
これにより、区画に合わせて、最良のタイミングで収穫することが可能になり、フレッシュ感と躍動感のある香りや、完全に熟したポリフェノール分、芳醇で絹のように滑らかで柔らかいタンニンを備えた極上のブドウを収穫できました。
収穫は、8月29日、樹齢の若い区画で始まり、9月16日、マッセート・チェントラーレの区画で完了しました。
試飲コメント
例年通りのヴィンテージで、収穫期に理想的な気温に恵まれ、気品あふれるマッセートとなりました。熟成感があり、複雑で、フレッシュ感が豊かな香りと、芳醇で絹のように滑らかで上質のタンニンが、絶妙のバランスを見せています。色調は濃く、深い色。香りは、熟した赤い果実、スパイス、バルサミコ、ココアなどの豊かなアロマを感じます。口に含むと、官能的で芳醇。凝縮感が非常に高く、スケールが大きくて滑らかなタンニンが見えます。果実味のある香りの背景には、微かな樽香が絶妙のアクセントになっています。余韻は活き活きとしており、ココアのニュアンスがしっかり表れています。
マッセート当たり年 2006年
ロバート・パーカー 100ポイント!
予想される飲み頃:2016-2035
2006年は、雨の多い冬で始まります。続いて温かい春が訪れ、6月の第1週に開花しました。
4月から8月までほとんど雨が降らなかったため、ブドウの房は例年に比べて小振りになります。
夏は、異常な高温には至らず、香り豊かなブドウがたくさん育ちました。
ブドウの成熟期には理想的な天候に恵まれ、また、房が小振りであったことから、非常に凝縮度の高いブドウとなり、糖度、タンニン分、酸度のいずれも、例年を大きく上回りました。
収穫が始まる時期には、凝縮感があり均一に完熟したブドウとなります。
収穫は、9月6日、上部のマッセート・アルト地区から始まり、9月23日、中央部のマッセート・チェントラーレ地区で終わり、全部で4ロットとなりました。
試飲コメント
マッセート2006は、若いうちは強靭で力に溢れていましたが、今は当時の派手さがまろやかになり、クラシックでエレガントなマッセートに仕上がっています。マッセートに特徴的なパワーを備えながらも、エレガントな要素が途切れることはありません。色調は濃く、熟したフルーツや地中海に特有のハーブの豊かな香りが一体となっています。2006年のヴィンテージの特徴がしっかりと出ており、熟成感、凝縮感、バランスの良さが見えます。熟した果物やジャムの香りはスケールが大きく、暑い夏を連想させます。口に含むと、力に溢れ、芳醇で濃厚。きめが細かく甘みと艶のあるタンニンが、酸味と絶妙なバランスを見せており、エレガントでフレッシュ感のある余韻はいつまでも消えません。
マッセートの当たり年(100点を除く)
2018年、2017年、2013年、2010年、2008年、2001年、1998年
マッセート当たり年 2018年
ロバート・パーカー 97ポイント!
ジェームス・サックリング 97-98ポイント!
アントニオ・ガローニ 98ポイント!
暑くて乾燥した2017年に続く2018年は、通常の気候に戻りました。
収穫開始は8月31日で、株仕立てにした最も樹齢の若いブドウの区画から始まりました。1週間、空けて、9月6日、古木の区画で収穫を開始。9つある区画ごとに、別々に収穫するため時間がかかり、完全に終了したのが10月9日でした。
試飲コメント
マッセート2018は、世界に類を見ないテロワールと、2018年の気候をそのまま表したワインになりました。色調は濃厚で、熟したチェリー、プラム、香ばしい新樽の豊かな香りがあります。口に含むと、マッセートに特有の豊潤で広がりのある味わいを感じると同時に、2018年に特徴的な絹のように滑らかで洗練された舌触りがあります。余韻は非常に長く、若々しいタンニンを感じます。歴代のマッセートの中でも特にエレガントで、豊潤であると同時に優雅な風味を見せています。
マッセート当たり年 2017年
パーカーポイント: 97点
予想される飲み頃:2024-2050
2017年は、近年、最も暑く、雨が少ないヴィンテージとなりました。
収穫開始はマッセート史上、最も早く、8月24日から30日までの3日間で完了しました。例年とは異なる天候だったため、区画ごとではなく、木ごとに収穫し、全部で4ロットと少ない状態になりました。
試飲コメント
マッセート2017は、同年の特徴を備え、暑くて乾燥したヴィンテージ特有の完熟し、凝縮度の高いワインになりました。色調は黒に近く、香りは、十分に熟して濃厚で凝縮感のある黒いフルーツを思わせ、スパイスやリコリスのニュアンスも感じます。口に含むと、凝縮度が高く豊かな果実味と、フレッシュ感やバランスの良さを感じます。タンニンは緻密で絹のように柔らかく、余韻は非常に長くて、果実味と活き活きした酸があり、フレッシュ感に溢れています。マッセート史上、最も暑いヴィンテージですが、豊潤であると同時に優雅な風味を見せ、典型的なマッセートに仕上がっています。
マッセート当たり年 2013年
パーカーポイント: 97点
予想される飲み頃:2020-2045
乾燥した2012年に続く2013年は、温暖で雨の多い冬で始まります。春は、涼しくて雨が多く、花が咲いたのが例年より2週間遅くなります。開花は不規則で、長期間に及びました。
8月の嵐で、特に夜間の気温が大幅に下がったことで、香りの要素が非常に大きく育ちます。
収穫は、9月12日、上部のマッセート・アルト地区で始まり、9月25日に中央部のマッセート・チェントラーレ地区で完了しました。
試飲コメント
マッセート2013には、全体的に成長が遅くて、収穫期の穏やかな気候が表れています。これはメルローにとって非常に好ましい気候であり、晴天でも過度の熱を受けることがなく、ゆっくりと完全に熟して、非常に豊かな香りと、完璧に熟したポリフェノールが育ちました。
色調は、濃厚なルビー色。香りは、素晴らしいフレッシュ感と複雑さを備え、完全に熟した果実味があり、バニラとココアの繊細なニュアンスを感じます。
口に含むと、しっかりしたコクがあり、凝縮度が高く、絹のように柔らかく滑らかなタンニンがあります。黒いフルーツの香りや新鮮な果実味と、エレガントな余韻がいつまでも続き、繊細なココア香りが後を追いかけます。
マッセート当たり年 2010年
パーカーポイント: 98点
予想される飲み頃:2017-2045
2010年は、近年では全てが最もゆっくり進んだヴィンテージです。
収穫は9月14日に始まり10月4日に完了。
試飲コメント
2010年は涼しい気候になり、エレガントで上質で複雑な香りを備えたワインになりました。色調は深くて濃く、香りは豊かで深みがあり、活き活きとしたミネラル感や繊細なスパイスのニュアンスがあります。口に含むと、暑い年に見られる濃厚さは感じませんが、きめの細かいしっかりしたタンニン分がいつまでも消えずに残ります。同時に、チョコレートやトーストのエレガントな香りも消えることなく続きます。エレガントでフィネスに富んだマッセートですが、マッセートの特徴である壮大なスケール感も備えています。
マッセート当たり年 2008年
パーカーポイント: 97点
予想される飲み頃:2015-2037
春は涼しくて雨の多く、例年と同じ時期に発芽しました。夏はほとんど雨が降らず、猛暑が連続し、この状態が9月の初旬まで続きました。ブドウの実が色づくヴェライゾンも良好で、成熟も順調に進みました。
収穫は9月4日、若木を植えたマッセート・ジュニア地区で始まり、最後は、9月18日、マッセート・チェントラーレ地区で完了
試飲コメント
マッセート2008には、暑いヴィンテージの特徴が表れています。暑い年だったため、ブドウのほとんどは9月前半に収穫しました。非常に高い凝縮度を見せ、深みがあり若々しい色調となりました。香りは豊潤で、完全に熟した果実味が前面に出ていますが、過熟の痕跡は見えません。スパイシーでミネラル感のある強く豊かな香りを感じます。口に含むと非常に濃厚で、凝縮感があり、豊潤で、純度が非常に高い果実味があります。緻密でしっかりしたタンニンを感じ、はっきりした輪郭と精密さが素晴らしいバランスを見せています。長期熟成に耐える典型的なマッセートと言えます。
マッセート当たり年 2001年
パーカーポイント: 98点
予想される飲み頃:2010-2030
冬は例年より気温が高く降水量は平均を越えました。これにより、3月下旬から4月上旬という早い時期に芽が出ます。
春は、気温は例年並みでしたが、雨が多く、5月中旬に開花したメルローには好条件となりました。ブドウの果実は大きく、良好な状態でした。
夏の気温も平均的で、雨はほとんど降りませんでした。9月中、気温は平均をやや下回り、これによりブドウはポリフェノール成分がゆっくり熟し、完全に成熟しました。
収穫は9月上旬に始まり、4週間後に完了します。ブドウの状態は非常に良く、熟成も均一でした
試飲コメント
2001年は、1990年代の終わりから始まった偉大なヴィンテージから続く優れたヴィンテージと言えます。華麗で、芳醇で、力に溢れたマッセートに仕上がりました。成熟度が極めて高く、たっぷりした果実味と、完璧にバランスの取れたタンニンの骨格が一つになり、記念碑的なワインとなりました。現在、飲み頃を迎えています。
マッセート当たり年 1998年
パーカーポイント: 97点
予想される飲み頃:2008-2028
冬の終わりと春の初めは穏やかな気候となり、早く出芽しました。5月末に開花し、果実も均一につきます。夏は非常に暑くて乾燥し、平均をはるかに越える高温になることもありました。
この年の降雨量は年間で450mmとごく僅かでした。果実が色づくヴェライゾンは7月中旬に始まり、極めて均一に色づきました。
7月末にブドウを間引き、理想の条件下でブドウが成熟するようにしました。
良好な天候のもと、9月3日から9日に収穫しました。
試飲コメント
前年の1997年のような例外的なヴィンテージを越えるワインができることは非常に稀ですが、1998年は、ボルゲリの1990年代の10年間で最高のヴィンテージとなり得ます。1997年に続いて暑い夏となった1998年は、力にあふれ、凝縮度も高い素晴らしいマッセートになりました。果実味は密度が高く、スケールが大きく、深みがあります。非常にしなやかでたっぷりしたタンニンが果実味をしっかり支えており、圧倒的に逞しい骨格とフレッシュ感がワインに生まれました。今が飲み頃で、既にスケールの大きさが出ています。長い熟成期間を経て、大きく花開くマッセートになっています。
マッセートの当たり年の飲み頃
当たり年の優良年ほど成分が充実しており、長期熟成に向いております。飲み頃までには少し時間が掛かります。
ヴィンテージに寄っては力強いポテンシャルを感じるので、さらに長期熟成可能です。
基本的には10年~30年後に飲み頃を迎えます。
気候によってブドウの成熟が難しい年ほど成分はやや希薄になる傾向があります。飲み頃には早く達しますが長期熟成には向かない傾向があります。
7年~20年後に飲み頃を迎えます。
マッセートの味わい
色調は深くて若々しく、香りは完熟して凝縮度が高く、黒いフルーツを思わせる圧倒的な果実味の中に、ココアやスパイスのニュアンスを感じます。口に含むと、豊かで熟成感があり立体的なタンニン、官能的で生命力に溢れる果実味、活き活きした酸味が絶妙のバランスを見せ、透明感があり粒の立った余韻となって、いつまでも響き残ります。
マッセートで有名なスーパータスカンとは
イタリアではワイン法により品種の制限があります。その品種を守っていないワインに関しては上級の格付けがされません。
詳しくはこちらから
スーパータスカン一覧!当たり年をワインごとに分析しておすすめを紹介
マッセートを紐解く
ここまで有名なワインであるマッセート。このワインが誕生するには奇跡的な条件が必要不可欠です。
まさにこの奇跡的条件を最大にワイン造りに活かした奇跡のワインマッセートを見ていきましょう。
マッセートの畑は6.63haです。イタリア語でMASSIが「巨大岩」を意味するとおり、片手には余るほどの大きな石が多いのが何よりの特長です。
畑は海抜120mの丘の上にあり、標高と土壌には差がありその差で大きく3つに区別されています。収穫は、果実の糖度と水分量が抜群の状態で収穫できる早朝に実施されます。収穫された果実は15kgの小箱で運ばれ、2度の選果が行われます。
醸造においてはイタリアの伝統的製法ではなく、最新の醸造設備を完備しており、モダンで丁寧なワイン造りが行われています。
適正な温度管理が可能なステンレスタンクを使用し、畑の区画ごとに別々に醸造します。毎日テイスティングし、進行状態を確認しながら、25〜28℃の温度で15〜20日間かけて発酵を行います。
その後、ミディアムトーストのフレンチオーク100%の新樽に入れられます。まず12ヵ月間熟成させ、各樽をブレンドした上でさらに12ヵ月間の樽熟成をし、瓶詰め後、1年間の熟成を経てリリースされます。
マッセートの立地、畑
最高醸造責任者 アクセル・ハインツ
「まさに、ココで何か重要なことが起こる。あたらしく、ユニークな前途をもたらす何かが」との直感は正しかったのです。
ここは自然に溢れ、人の手が一切入っていない未開の地、それがマッセートの畑です。立地条件も極めて悪く、これほど高品質のワインができるとはだれも想像していませんでした。まして、メルローに最適とはとても思えません。ここは非常に極端な土壌で、ここで極上のワインを造るのは、尖った峰の上を歩くようなものなのです。最良か最悪のどちらか。良質のブドウを造るには、限度すれすれのストレスを木にかけねば良いブドウはできません。失敗してしまうリスクがありましたが、いつも素晴らしいブドウができます。この畑には本物だけが持つ力があります。この土地の自然条件が、重要な決定をしてくれるのです。
はじめから条件が最適と分かっていないこの立地から、イタリアの原産品種ではなく、メルロを選んだのか?
そしてリスクを承知で造ったワインは奇跡的にもメルロにのポテンシャルを引き出し、奇跡のワインを造った。その事実は、誰もが称賛するべく認められたものです。
今現代では科学の発達もあり、土壌から気候条件までブドウに適しているのかは調べれば分かるのは事実です。でも1987年の科学の発達がしていない状態からこのワインができるまで、この物語は計り知れないでしょう!
地中海の影響
海は、マッセートのヴィンテージに大きく影響を与えます。
夏のさざ波の立った水面は巨大な鏡となり、ブドウが受ける日照が2倍になります。ピュアで力強く、間接的な海の光が、ブドウの木にエネルギーを与え、タンニンを柔らげ、豊満かつ繊細なニュアンスのバランスに到達します。
光が畑に注ぐにつれ、海は別の要素を吹きかけてきます。湿気を帯びた柔らかい地中海のそよ風がブドウの木や房の間を吹き抜け、冷えた大気が、ブドウが熟すスピードを緩やかにし、バランスが取れて輪郭がはっきりした柔らかな酸味がブドウの実の中でゆっくりと成熟します。
雨が降らない月が続いたとしても、ブドウには瑞々しい果実味があふれ、雨が多い時でも、この大気のおかげでブドウの実は乾いています。
土壌にも、海の影響が見えます。マッセートの畑は数百万年前にできた青色粘土層の上にあり、ブドウは粘土層に向かって根を伸ばしています。粘土層に届いた根は、太古の化石からミネラル分を吸収していきます。
上空、畑、土壌。そして、海。この地中海がなければ、マッセートは存在しなかったと言われています。
青色粘土層
この地層は、岩石と同じぐらい硬いのですが、同時に不思議なもろさを併せ持ち、環境や気候の変化に対し柔軟に適応する優れた特性を持っています。
このコントラストが、マッセートのワインに見られる力強さと、絹の様なエレガントさに反映されていると思われます。
マッセートの誕生
イタリア、トスカーナ州の地中海沿岸に、有名な小さな村、ボルゲリがあります。
ティレニア海を見下ろす丘にあり、ブドウ造りに最適で理想の地。一度もブドウの木を植えたことがないこの丘で、素晴らしいブドウができると分かったのは1980年代のことです。
最初にブドウを植えた時、あの土地ではブドウは育たないと村の誰もが思っていました。それから30年が経ち、畑の素晴らしさが明らかになりました。
マッセートの哲学
マッセートでは、できる限り人の手を入れないワイン造りを心がけて醸造されています。
マッセートが目指すのは、自然の恵みを捉え、それを最大限に引き出すという単純ではありますが、難しいことです。
しかし、畑でのブドウ栽培やワインの醸造で、可能な限りシンプルに造るのは本当に簡単ではありません。発酵用のタンク、熟成用の樽、ポンプを使わず重力だけでワインを移動させる仕組みやワインに愛情を注ぐ人々。
これが全てであり、そしてマッセートの哲学なのです。
マッセートの名の由来
マッセートのボトルを開けると、万華鏡が液体となって表れます。華やかな豊かさ、磨かれたエレガントさが一つになった稀少なワインがマッセートです。
ここの畑の土は、強靭で、同時に柔らかさも備えています。
この土壌の表層部にあるのが岩のように硬い青色の粘土層で、通称、「マッシ(イタリア語では巨大な岩)」。マッセートの名前はここに由来しています。
フレスコバルディ家
ファミリーが持つ伝統、経験、改革の精神。700年の間、これらを創造力と卓越性の追求に融和させてきました。一族は、トスカーナ州のテロワールが持つ豊かな多様性を尊重し、それが明確に表れるワイン造りを目指しており、トスカーナを代表する最高峰の生産者の一人です。
品種メルロー
これも有名で、フランスボルドー地方発祥の赤ワイン用ブドウ品種です。深みのある色合いに、きめ細やかなタンニン、まろやかで口当たりの良いワインとなるのが特徴です。標高の低い粘土質土壌で育つ事で、ボリューム感を備え、ワインにふくらみをもたらす。
まとめ
今回紹介したマッセートは、オルネライアが手掛けるトップキュベです。
オルネライアがメルロの畑を独立させて誕生させた銘柄で、1986年に「メルロ」としてリリース。1987年に初の「マッセート」が誕生しております。
メルロ品種から造られるフランスで有名な「ル・パン」がありますが、マッセートは「イタリアのル・パン」と呼ばれており、イタリアの権威あるガイドブックであるガンベロ・ロッソでは、2021年現在トレビッキエリ(最高評価)を計10回獲得しております。
世界的ワイン誌ワインアドヴォケイトでは2006年、2015年、2016年のヴィンテージでなんと3度も100点満点を獲得するなど、世界的ワインへと成長した銘柄です。
もちろん知っている人が多い有名なワインですが、値段は高騰しており、最近では10万円を切ることはなくなりました。
現在出ているヴィンテージも値段が下がることが無く、高騰していくと考えられます。
決して安くはありませんが、人生の中で思い出に残る1本になる事は間違いないと思います。是非この機会に飲んでみてはいかがでしょうか?
感想を楽しみにしております。
試飲コメント
2016年は、典型的なマッセートに仕上がっています。トスカーナ沿岸地方の気候がワインにそのまま表れています。発育期は乾燥して豊かな日照に恵まれ、成熟期は陽光と恵みの雨により、果実は理想的に成熟しました。色調は深くて若々しく、香りは、完熟して凝縮度が高く、黒いフルーツを思わせる圧倒的な果実味の中に、ココアやスパイスのニュアンスを感じます。口に含むと、豊かで熟成感があり立体的なタンニン、官能的で生命力に溢れる果実味、活き活きした酸味が絶妙のバランスを見せ、透明感があり粒の立った余韻となって、いつまでも響きます。